チャプター1-5 インストラクション・ワン

チャプター1
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//前回 チャプター1-4 ヴォミティング

四人がゆったりと腰掛けられるボックス席、テーブルの奥側には二人分の山盛りの白米と味噌汁、サンマの塩焼き、ベーコンエッグ、キャベツ。ご機嫌な昼食といった出で立ちだ。白い湯気と少し焼き目の付いたベーコンの香りが食欲を誘う。普段ならば。
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本来ならこれは朝食に食べたいメニューッッッ!!!でも話の都合上昼ごはんです。詳しくは刃牙読んでください。このメニューから言えるのは、第玖地砦では稲作、大豆とキャベツの栽培、魚の養殖、鶏と豚の畜産が行われているという事。メシが上手いのは軍隊を動かすのに最も必要な条件だと個人的には思っている。
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一方手前側にはコップが2つ。牛乳がなみなみと注がれ、それだけだ。なにせ二人とも、食欲がない。
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つまり酪農もやってる。閉鎖環境下でカルシウム含む栄養をバランスよくとるならこれが多分一番手っ取り早いと思います。ルーデル閣下も言ってた。

「まああれやった後だったら、普通は食欲湧かないよな。俺もそうだったよ。まあこの人は適合試験の後も普通にメシ食ってたらしいけど」

サシバ少尉が隣で豪快にベーコンにかぶりつくイスカ少佐を指さしてケタケタと笑う。

適合試験後にひっくり返りそうな胃を抱えながら、二人に連れられて移動したのは軍の食堂だった。ちなみに食事の時間が違うらしく、マナさんはお留守番だ。一度に300人が食事をとれる施設だという。席の埋まり方は8割といったところだろうか。制服を着た人々があちらこちらとトレーをもって動き回っていたり、食事を楽しんでいた。

一方自分たちの手元には牛乳が一杯だけ、まあ食欲がないのは本当だが、少し寂しい気もする。
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食べ物が美味しいのは軍隊を動かすのには必須条件だが、部隊内で食べ物に差があるのはこれも問題である。隣で温かくて旨そうな飯を食ってる奴の横でお前はこれねと缶詰渡されたら暴動につながりかねない。まあ食べられないのに無理に食べる必要もありませんが

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「さて、まあアンタたち二人にはあの吸血騎、芒月ぼうげつに乗ってもらうわけなんだけれどね。じゃああれに乗って戦う事だけが仕事かというと、そういうわけでもないのよ。どっから説明したもんかな……よし、とりあえず吸血騎についてか。というわけでサシバ、説明ヨロシク」
「丸投げですか、まあ確かに少佐よりは吸血騎の説明は詳しくできるとは思いますけど」

山盛りの食事をぺろりと平らげた二人が、食後のコーヒーを飲みながら話を進める。

「それじゃあまずは、さっきの適合試験の話からしようか。まず君たち二人はあの時、首の後ろにこう咬みつかれて「食べられた」と思う。そこの痛みは?」
「あっ、言われてみるとそんなに痛くはないですね」
「俺もです。刺さった瞬間は痛かったのに今は全然平気というか」
「よし、なら問題ないな。じゃあ次、咬みつかれた後に一瞬身体が動かなくなって、その後何かこう胸のあたりをグッと押されるような感覚というか、心臓が一瞬大きく動くような感じは覚えてる?」
「ええ、そしてあの後からなんだか猛烈な吐き気がするようになりました」

そこまで聞くと少尉はニヤリと笑い、コーヒーを一口飲む。そしてまた口を開き、とんでもないことを言い出した。

「別に驚かなくてもいいけど、その心臓が押されるような感触、実はあの時、二人の心臓は止まっていた・・・・・・・・・・・・んだよ」

驚くなという方が無理だった。心臓を止められた?死んでしまうではないか。

「まあ驚くなって方が無理か、具体的に説明しよう。吸血騎の中には感応装甲という部品があるんだけど、それはまあ言うなれば人間の筋肉のようなものだと思ってくれればいい。そして筋肉を動かそうとしたら、筋肉に血液を通さなければいけない。ここまでは良いかい?」
「ええ、その感応装甲が筋肉で、筋肉を動かすのには血液がいる。わかりました」
「じゃあ次、血液の供給元の話だ。とは言ってもこれは何となく察しが付いてたりするかな?吸血騎は吸血騎遣いの血液を供給することで稼働する。軍に入る前に適性試験受けたと思うけど、あれは吸血騎に適合する血液の持ち主を特定するためにやっているんだ。まあそれ以外にも配属の適性を見るというのもあるけどね、メインはこっち。ちなみに一般人の吸血騎への適合率は大体0.2%ぐらいと言われている」
「俺たちの血を吸って吸血騎は動いていて、動かせる人はだいたい0.2%と。少しこんがらがってきたけどまあ大体わかるっス」
「今年の入隊が300人で適合が2人って事は大体0.6%だから今年の新人は活きが良い、って事になるかな。最後に吸血騎遣いの身体と吸血騎のリンクの話だ、さっきは少佐に芒月の足を触られた時に、まるで自分の足を触られたような感触がしただろ?視界も芒月の視点になっているから少し高い所から見下ろすような感じになったはずだ。吸血騎遣いの肉体感覚をカットして、代わりに吸血騎側のセンサーのデータを首筋を通してフィードバックしている、というわけだ」
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適合率0.2%ということは、500人に1人の割合で適合することとなる。案外高く感じるのではないだろうか?しかし軍用兵器としてこの割合の人間にしか使えない(訓練云々の話ではない)というのは割と致命的な欠陥だと思う。特に同学年が300人しかいないような世界ならなおさら。2年に1人しか吸血騎が補充されない上にその技量や適性もまちまちとなっては……

なるほど、分かったような分からないような話だ。とにかく、私の血は吸血騎を動かすのに適していて、私の血を使って吸血騎は動いている、血液を吸血騎に送り本体に戻ってくるときに外界の間隔が本体に戻ってくるという事らしい。

「感覚のフィードバックというのは視覚や触覚以外にも、体内の状態に関してもフィードバックされる。じゃあ問題だ、吸血騎のお腹の中には胃が無い、というか消化器官が無い。この状態で消化器官をもった俺たち人間が吸血騎とリンクするとどうなると思う?」
「胃が丸々無くなったような感覚になる、ですか?」
「シラハちゃん正解、察しが良いね。さっきの吐き気はそういう事ね。他にも人によっては手足の痺れとか頭痛が出たり、あるいはほとんど何も症状が出ない人もいる。俺たちはこういうのまとめて「棺桶酔い」って言ってるけど。ちなみに最初のリンクの時が一番症状がひどいけど、その内身体が慣れて出にくくなるから安心していい」
「じゃあ心臓はどうなんすか?吸血騎には心臓が無いからさっきも俺たちの心臓が止まったというわけですか?」
「心臓はちょっと特殊だ、吸血騎に血液を供給しなけりゃならないからね。ここは別にリンクがしていないだけで心臓に近いパーツが存在している。人間の心臓は衝撃を受けたりすると停止することもあるから、ここだけは別設計ってわけ」
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自分が持っている、あるいは持っていない器官の情報が入ってきたら処理できずノイズとなってひどい不快感になって処理されると思われる。具体的に言うと、原作攻殻機動隊で少佐が友達と違法薬物キメながらレズXXXしていた時に少佐にアクセスしたバトーさんが「ハラの中に異物が」などと酷く気持ち悪い目に合っていた。

吐き気の原因も含め、何となくだが吸血騎のことが理解できて来たような気がする。隣でのんびりとコーヒーを啜っていた少佐が会話に参加してきた。

「はい、説明ご苦労さん。じゃあアタシからも問題、胃の無い吸血騎にリンクすると胃が抜かれたような感覚になる、じゃあ逆に人間には存在しないパーツがあったらそれはどうなる?例えば羽根が生えていたとしたら?空を飛べると思う?」

考えてみる、羽根が生える?生えたところで私は空を飛んだことなんてない。そもそも生えた羽根が動かせるのか、結局持て余すのではないか?かえって普段邪魔なのでは?

「その通り、羽根だけ生やしたところで空が飛べるかは全く別の話だ。使いこなせないどころか邪魔デッドウェイトにしかならない。でも、アタシたちとしてはどうにかして羽根の使い方を覚えてもらわなけりゃならない」

飲み干したコーヒーカップを机にカタリと置き、私たち二人に指を突き付けて少佐は宣言した。

「覚悟しな、アタシが空の飛び方を教えてあげる」
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人間には無いパーツを無理矢理取り付けたところで、実際に使いこなすには十分な訓練、および日常生活で違和感なく使えるようになるまで使い続けるという経験が必要になってくると思う。こちらのように親指を一本増やす義指というのはあるそうだが、これの制御は専用のブーツをはいて足裏で制御するようになっているそうだが、単に物を持つ程度ならともかく歩きながら手に持ったペットボトルの飲み物を飲む、など連動した動作は相当に訓練を重ねないとできないのではないだろうか?

【インフォメーション】
チャプター1読了完了、PDF閲覧権限が更新されました

次回、チャプター2-1 ウォーミング・アップ
ご期待ください

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MaEm

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