//【小説レビュー】研究室の真夜中ごはん 腹が減っては研究は出来ぬ、士気を上げるにはまず美味いメシから

小説
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ネット小説レビュー企画、その4です。今回はなんとドンパチのドの字も出てこない平和極まりない感じのお話です。やっぱいくら好きでも、毎回やってたらお腹いっぱいになっちゃいますのでね。

ところで、このDOUBLE//SLASHなんですが、自分の小説よりもこういうレビュー記事投稿した時の方がPV多いのはどうにかならんのでしょうか。自信失くすぞコラァ。きっとレビューしている小説がどれもこれも面白すぎるのがいけないんですね。MaEmも精進します。

というわけで、今回ご紹介する作品はコチラ!

作者:神岡鳥乃
タイトル:研究室の真夜中ごはん(
カクヨム版)(なろう版
2019年5月現在連載中

作者様コメント

生活サイクルが夜型の大学院生、塔山うららは、ある真夜中の研究棟、刃物を持った女性と出くわします。
不審者と思われたその女性は、うららと同じく夜型生活の大学院生、鳥見川 氷彗でした。
彼女は研究棟の休憩室で、料理を作っていたのです。

流れで一緒にごはんを食べることになった2人は、それから少しずつ料理を通して仲良くなっていきます。

さて、今日の夜食は何でしょう?

・二人がご飯を作って食べるだけのお話です。
・ファンタジー要素はありません。
・幽霊、あやかし要素はありません。
・ミステリー要素はありません。
・二人がご飯を作って食べるだけのお話です。

また、科学的説明はあくまでスパイスです。
つまらなかったり、面倒くさければ、読み飛ばしてもらっても全然大丈夫です。

以上の点にご注意した上で、お腹を空かせてお読みください。

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要約すると大学院生二人がメシを作って食うだけの話です

↑上の見出しで終わりです。マジで。

……これだけじゃレビューでも何でもないのでもう少しお話ししましょう。ひょんな事から出会った理系の大学院生二人が、昼も夜もなく研究をしている中出会う所からこのお話は始まります。

かたや日々忙しすぎてお惣菜かインスタントラーメンぐらいしか食べていない、シミュレーション系を研究する「塔山うらら」、かたや専攻は代謝系、夜な夜な(なぜか)キッチン完備の研究棟の食事休憩スペースで一人夜食を作る「鳥見川氷彗」。

不審者か幽霊かと思っていた相手と、なぜか一緒にハンバーグを作ることに。無口系美少女だと思っていたらこの幽霊、もとい鳥見川さんが料理の事になるとまあ喋る喋る。料理は化学!肉以外にパン粉を入れるのも、塩を振るのもちゃんと理由があるんですと力説する鳥見川さん。

そうこうしているうちに、ハンバーグが焼き上がりました。初対面だけどひざを突き合わせて二人、いただきます。

そしてこの鳥見川さんの作るハンバーグの、なんと美味しい事か。久々に食べたまともなご飯に、塔山さんは箸がとまりません。気が付いたら、5分も経たずにハンバーグが胃の中に消えていきました。

そんなこんなで意気投合した二人、そういうワケで始まった、夜中に大学でこっそり食べる真夜中ごはんが始まりました。

こんな感じのノリで、肉じゃがおかゆ手前味噌と、ゆるゆるダラダラと続いていく日常お夜食ストーリーです。

人はご飯を食べなきゃ生きていけない

昔の話です。
MaEm妹「兄上、宿題なんだけど国民の三大義務ってなんだっけ?」
MaEm「よく食うよく寝るよく遊ぶ」
妹「オーケー聞いた私がバカだった」

正解は勤労、納税、子供に教育を受けさせるの3つです。馬車馬奴隷の如く働き、僅かな食う分を残して国に寄越せ。余った分で教育受けさせて新たな奴隷を育てろというお話です。これテストに書くと確実に後で職員室に呼び出し喰らうので、これを見ている中学生の皆さんは気を付けましょう

よく食うよく寝るよく遊ぶは三大欲求ですね。人間が人間らしい生活を送るためには、まずこの三大欲求を満たしてから。働くだの勉強するだのはその後の話です。

そして、どうせ食事するなら美味しいゴハンが食べたいじゃないですか。

ご存知の方も多いかと思いますが、「孤独のグルメ」という漫画がございます。深夜枠ですがドラマ化されたりもして、現在はシーズン7まで放送。深夜にもかかわらず平均視聴率は3.5%とかなりの割合を叩きだしています。

この作品知らない方のためにざっくり解説すると、「中年オヤジが毎回色々な飯屋に入り、心の中でぶつぶつ独り言言いながら美味そうにメシを食う」これだけなんです。それ以外に喋る内容は精々注文する時といただきますごちそうさまぐらいのモンです。

なのにこれだけの人気が出るっていうのは、やっぱり人は美味しそうにメシを食う人を見ていると、幸せになれるという事なんでしょうね。

他にも「ルパン三世 カリオストロの城」で警備中の銭形警部がカップラーメン食べているシーンや、「天空の城ラピュタ」でパズーとシータが分け合って食べていた「ベーコンと目玉焼き乗せたパン」とか。見終わった後にちょっと冷蔵庫開けて卵とベーコン入ってなかったかな?なんて探したくなるわけです。(ジブリに偏ってるけど、それだけ宮崎先生の書く食事シーンが美味そうだってことで)

とにかく、こういう人間の本能に訴えかけてくるシーンと言うのは、印象に残りやすいものです。

『 ナイフとフォークは持っていなかったので、割り箸ではさみ端から一気にかぶりつく。瞬間、口の中でじゅわっと肉汁があふれ出た。熱を閉じこめた肉は、最初こそ歯ごたえを感じたが、噛めば柔らかくほどけ、さらにあふれる肉汁と絡まり、もつれ合い、じんわりと溶けていく。こしょうの香りが鼻孔を駆け抜け、さらに食欲を引き立てる。これでは、口も手も休まらない。』

いやーこの、文章だけでお腹減ってくる感じと言うんですか?たまらんわけですよ。

一方自分の作品を振り返って

MaEmの現在書いている小説は、正体不明の紅くて角ばった、どうみても食べられそうにない敵を相手に少年少女がロボットに乗ってドンパチやるお話です。今回の真夜中ごはんとは真逆と言っても良いような内容ですね。

それでもMaEmは『食事シーンにはなるべく力を入れて書いてやろう』と思って書いています。それは何でかと言いますと、『軍隊動かすのに必要なのは、金でも武器でもガソリンでもなく美味いメシ』という信念があるから。温かくて美味しい食事と言うのは身体に栄養を補給するのと同時に、気力を充実させて「よし、これを食べたらまた戦ってやるか」という気にさせてくれます。逆に、どんなに辛く苦しい状況でも、そういった食事が出来ればあと一歩踏み出す力が貰えるというものです。

他にも、「階級の上下で食事内容に差を付けないようにする」というのは絶対に守ろうと思っている内容だったり。

何でMaEmがこんなに食事にこだわっているかというと、学生時代にやっていたバイトの経験から。

詳細な内容はその内書こうと思いますが、学生時代にMaEmは派遣イベントスタッフというバイトをしていました。その中で行った所の一つに、野外フェスのトイレ番の仕事というのがあります。

やる内容というのが、野外に設置されている仮設トイレの近くに待機して汚れたら清掃、水が切れたらホースで補給する。そういう内容です。外で12時間。

これがまたキツイ。色々と精神にクるものがありましたが、その中でも一番きつかったのが「参加者が野外フェスでビール飲みながらバーベキューしている横で自分は冷えた弁当食っている」

これが一番堪えました。旨そうなお肉の焼ける香りの漂ってくる横でこれ食べるのは相当にきついです。まさか「混ぜて~!」って行って食うわけにも行かないし。

冷えた弁当食べた後は、参加者のアホ共がポイ捨てしていったビールの缶をゴミ袋に拾うお仕事。いやー惨めったらありゃあしねえ。

まあこういったワケで、MaEmは軍隊の中での食事描写というのは特に気を遣うようにしています。士気の落ちた兵士は平気で裏切るぞ。食べ物の恨みは怖いんだからな

言うのは易し、書くのは難し食事描写

そうは言っても、この食事描写というのは簡単そうに見えてかなり難しい。このサイトの読者の方には実際に自分で書いている人も結構いるんじゃないでしょうかね?そういう人はわかっていただけるかとは思いますが。

まずもって小説家というのは、文章で登場人物の感じたことを伝えねばなりません。視覚や聴覚の話だったら割と簡単に書けるんですよ。真夜中ごはんの登場人物の鳥見川さんだったら、外見の描写は『 長い黒髪、全身を覆う真っ白い装束。そして右手には、ギラリと光る刃物。 』なんて書かれています。(理系だから白装束は白衣で、刃物は料理用の包丁なんですけどね)

一方味覚の描写、これが難しい。試しに書いてみましょう。『ハンバーグ食べた、しょっぱい』

美味しそうでも何でもないですね。

そもそも人間の舌というのは、苦い、酸っぱい、甘い、しょっぱいの4つしか感じ取れないそうです。そりゃあ描写難しいわけだ。

しかし、食事描写に力を入れてやろうと思ったらこういう所はどうしたって避けては通れません。『読んでるだけで美味そう』、そう言ってもらえるような作品を目指して、MaEmも日々精進していきたいと思います。

余談:食事描写のうまい作品二選

MaEmも今まで色々な作品通ってきましたが、その中でも「これは特に美味そう!」となる作品が二つあるのでご紹介。

一つ目は、故・香月日輪先生の『妖怪アパートの幽雅な日常』
このアパートの賄い担当、手の綺麗な「るり子さん」の作る食事がまた美味そうなのなんの。日本各地の妖怪が集まってきては各地の特産品を持ってきてくれたりしてくれるので、季節感あふれる料理の数々が魅力的です。2017年にアニメ化もされていますが、この食事描写に関しては是非とも活字で味わっていただきたいところ。

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二つ目は、『小料理屋 志衛』シリーズ。
こちらは2015年からかなり長期連載されていた、2ch(今は5chだけど未だに馴染まない)のスレです。筆者が実際に料理人経験者とのことで、作り方や接客など含めて、非常に濃い雰囲気で店内が描かれています。MaEmはあんまりお酒は得意なほうではありませんが、ちょっとビール飲みたくなるような、そんな気にさせてくれる作品です。(そして大して強くないのに飲んで頭痛くして後悔する)

どちらもお腹すくこと請け合いの作品ですので、是非ご覧ください。

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