ネット小説レビュー企画、その5です。今回ご紹介する作品は、格闘技モノ・アンダーグラウンドものとなります。
MaEmは小説書く活動以外に、別名義でDJなんかもやっていますのでね。こういう雰囲気は結構実際に見ている(さすがにここまでハデではないけど)のですが、そういった場の空気感とでもいうものが感じられる作品です
というわけで、さっそく紹介の方書いていきたいと思います
作者: 円$fin@小説家になろう 氏
タイトル:東凶アンダー・ザ・ロリヰタ(なろう版)
東凶アンダー・ザ・ロリヰタ ~ニノ太刀~(なろう版)
第一部 2018年11月完結
第二部 2019年6月現在連載中
作者様コメント(第一部)
渋谷の地下格闘技へ出場する16歳の葛葉亮治。そこへ現れたアンリエッタと名乗る謎のゴシックアンドロリータを纏う少女。そして、その少女に付き従う仄暗く妖しいもう一人の少女……それは”殺奴”と呼ばれる傀儡人形。それは、この国の戊辰戦争から第二次大戦迄、あらゆる闘争にて暗躍していたという。亮治はひょんな事から、この美しくも激烈な暗闇の住人達と、凄絶な闘争へ巻き込まれていく。
夜の渋谷の空気感が伝わってくる描写
先述の通り、MaEmは小説家としての活動だけでなく、DJなんかもできたりします。普段の活動はアニソンDJなんかが多いものの、やろうと思えばヒップホップ系以外は大抵のジャンルでのプレイが出来ます。
自分で回すこともありますし、もちろん普通にお客さんとしてそういったクラブイベントに遊びに行くことも多いMaEmですが、渋谷のそういったクラブに行ったこともそれなりに出入りしています。
実際に渋谷の繁華街に行ったことがある人はわかるかと思いますが、あの街は駅前などならともかくとして、一歩路地に入っていくとまあ治安の悪さがヒシヒシと伝わってくるんですねこれが
その辺にゴミは散らかってるわ、飲みすぎてぶっ倒れてる奴がいるわ、見た目からして明らかにヤバいとわかるようなお兄さんが客引きしてるわ、渋谷というのはそういった混沌とした独特の空気感が流れている街です。
さて、それを踏まえたうえで少し作中の描写を見ていきましょう。
百閒店から円山町に抜け、ラブホ街の真中にあるクラブ「BOMB’s」にてダンスイベントではない、ある興行が開催されていた。
この、渋谷界隈を中心とした地下格闘技イベント「東京-BACK”不”」である。
出場者は、格闘技道場に通っているアマチュア選手から、たまにプロ選手や街の喧嘩自慢の不良やホスト、偶に現役の暴力団組員まで腕に自信のある多彩な出場者が集うガラの悪いイベントである。しかし、ここ数年のアマチュア地下格闘技ブームを受け、出場者も観客の入りも中々上々で、下手なダンスイベントより客足が多かったりする。
あー渋谷でラブホ街、なおかつデカいクラブがある場所って言うとあの辺かな?というのが何となく雰囲気で伝わってくるんですよ。渋谷周辺の地理に詳しくない方は、グーグルマップでも見てください。
さすがに、MaEmもクラブの中で地下格闘技イベントやっている、なんてシーンは見たことがありません。まあ、そういった意味では荒唐無稽な設定だとも言えるでしょう。
でもさ、小説が荒唐無稽で何が悪い?って話ですよ。
実際に存在しないものを、文章の中で空気だけでも味わう。こういう事ができるのが小説の醍醐味であるわけで。皆さん、是非ともこの独特の暗くてなおかつ熱いこの一種異様ともいえる空気を味わっていただきたい。
追記:どうやら、この近辺のクラブで格闘技イベントは実際に行われていたそうです。と言っても、アマチュアの試合を場所を借りてやっているだけで非合法試合ではないとの事なのでご安心ください。ここに関してはMaEmの知識不足でした
あ、この近辺でクラブ営業している方、ならびに純粋にダンスミュージックが好きでたまらないという方のために補足しておきます。クラブに遊びに行っていきなり殴られるとか、何だか怪しいクスリ買わないかと持ちかけられたりとか。MaEmはこの手のクラブに出入りして遊ぶようになってから5年ぐらい経ちますが、そういった事は今まで一度も無いので安心してください。精々、一緒に行った友達が少ししつこいナンパに合ったぐらいのもんです。その時はスタッフ呼んで退場していただきました。
格闘戦描写の冴え(実はMaEmも参考にしていたりします)
拙作、bluebloodはメカ物ではありますが、格闘戦描写があります。それも、ビームで出来たサーベルだとかライトなセーバーとかの超兵器が出てきたりする奴ではなく、手足で殴りつける、蹴るといったある種野蛮と言ってもいい攻撃方法を設定しています。(これは、どんな状況でも最低限の戦闘を続行出来て、パイロットたる吸血騎遣いと高価な吸血騎を何としても持ち帰るためです)
さて、小説書いている方ならわかっていただけると思いますが、この格闘戦描写というのは結構難しい。ちょっとこちらのTogetterをご覧ください
キンキンキン!しか書かれていない戦闘描写だと一時期話題になっていましたが、バカにすることなかれ。実際に書いてみれば『目まぐるしく動き回る格闘戦シーンで、自分と敵の一挙手一投足を描写する』というのがいかに難しいかというのがよくわかるかと思います。
あんましこういう事言いたかないですけどね、叩くならお前がやってみろという奴ですよ
さて、それを踏まえて今作の格闘描写を見ていきましょう。MMAルール(いわゆる総合格闘技)やルール無用の路上喧嘩だと、殴る蹴る以外にも投げ技、関節技が選択肢に入ってきます。ちなみに、打撃技をメインとする選手をストライカー、投げ関節メインの場合はグラップラーと言ったりします。
亮治の左ジャブが何発か入ったが、相手は負けじと大ぶりのフックを返してくる。余り同じ場所にジャブを撃ち過ぎると相手がそれを見越して打ち終わりにデカイのを食らう羽目になる。上級者ならば、尚の事無駄なパンチは連打できない。格闘技は相手の技の読み合いでもあるのだ。
ただ闇雲に突っ込んでいくだけでなく、相手の動きをよく見て次の展開を考え、適切な攻撃あるいは防御を選択していく。こういった、『読みあい』の描写が随所に挟んであるんですよ。これがまた素晴らしい。
実際の総合格闘技の試合をよく見て研究し、小説の文体に落とし込んでいく。そういう研究がよく為されていそう。そういった印象を受ける戦闘描写です。
そして、この描写ですが実はMaEmも書く上でこの作品を読んだり、YoutubeでMMAの試合を見たりして結構参考にしていたりします。
bluebloodの場合、敵が空中に浮かんでいる事、手足が無い事から投げ関節ではなく打撃技メインで描写しています。そのため攻撃手段のバリエーションが減る分、そういった次の一手を考える描写、機体操作描写になるべく力を入れるという事を意識しています。
でも中身は正統派ボーイミーツガールだったりするわけですよ
ボーイミーツガール、少年は少女と出会った。
古今東西、色々なところで描かれている王道。あるいはむしろ陳腐、ベタとも言えるような展開です。
交響詩篇エウレカセブンというアニメがあります。見たこと無くても名前だけは知っている、という人も多いかもしれません。この作品もいわゆるボーイミーツガールから始まる話なのですが、シリーズ構成担当がインタビューで語った内容で『王道が大切だ、定番は全部やろう』と語っていたそうです。
少年はゴスロリ少女と出会った
少女の的確な指示で少年は試合に勝った
少女は命を狙われた
少年はビビりながらも命がけで戦った
……もう見飽きたとでも陳腐だとでも何とでも言いなさいよ、いくら言った所で、こういう展開はアツくて燃えるわけですよ。
男の子は泥臭く藻掻いて命がけで女の子を守ってほしいし、女の子は守られるだけじゃなくて一緒に戦ってほしい、MaEmはそう思うのであります。いや、これはレビューじゃなくてMaEmの性癖の話だなコリャ
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